世界一、いや、宇宙一高価な物質とは一体なんでしょうか?
真っ先に候補として思い付きそうなのは「金」や「ダイヤモンド」などでしょうか。
しかしそれらは宇宙一高価な物質・「反物質」の前には紙切れも同然の価値でしかありません。
一体反物質の価値はどれくらいで、なぜそこまでの価値を持つのでしょうか?
そんな疑問をイラスト付きで解説した動画を和訳しました!
Why Only 1 Gram Of This Material Is Worth $25 Billion Dollars
目次
反物質以外の高価な物質は1gあたりでどれくらい高いの?
高価な物質としてすぐに思い付きそうな「金」は、1gあたり56ドル(約6000円/g)とやはりかなり高額です。
しかし金よりも高価な物質はたくさんあります。
画像のような薬物の値段は金の数倍から数十倍にもなります。
(薬物ダメゼッタイ)
そしてダイヤモンドの価値はそれらをもはるかに上回ります。
その値段は1gでなんと最大60000ドル(約700万円)!
一応補足ですが金は他の物質より重いので1gあたりの大きさが小さくなるため、ここでは他の物質よりも低い数値が出やすいです。
とは言えダイヤモンドの価値は改めてすごいですね。
しかしダイヤモンドですら世界一高価な物質である「反物質」の前では無に等しいほど、反物質の価値は他の通常の物質を凌駕しています。
そもそも反物質って何?
人体、宝石、動物、地球、太陽、、、
私たちの知る物質は全て「通常の物質」であって、「反物質」ではありません。
それでは反物質とはそもそもどんな物質なのでしょうか?
簡単にいうと、反物質とは通常の物質とは構成が「反対」の物質です。
しかし原子レベルまで細かく見てみても、素粒子と原子で構成されている点は通常の物質と同じです。
ではどこが違うのかというと、反物質は「負の電荷を持つ反陽子」と「正の電荷を持つ陽電子」で構成されている点です。
通常の物質であれば「正の電荷を持つ陽子」と「負の電荷を持つ電子」から成るため、構成が反対になっていますね。
反物質の威力と活用例
通常の物質と反物質が接触すると、必ずすぐに両者が消滅します。
この反応を「対消滅」と呼び、お互いの質量の100%が完全にエネルギーに変換されます。
この対消滅を起こすという性質こそが、反物質がここまで有用だとされる所以です。
例えば現在最も効率的な核兵器でも、質量の7〜10%程度のエネルギー効率でしかありません。
そう考えると反物質と通常物質の対消滅による100%効率のエネルギー変換がいかにすごいかがお分かりいただけるかと思います。
例えばあなたがレーズンほどの大きさの1gの反物質を持っていて、それを地面に落としたとします。
すると反物質は地面を構成する通常物質と瞬く間に対消滅を起こし、あの広島と長崎に落とされた原子爆弾を合計した威力よりも大きな爆発が起きます。
この爆発はニューヨークの街を丸呑みするほどの威力です。
レーズンサイズでたった1gの反物質でニューヨークは完全消滅するのです。
反物質1gが対消滅すると太陽系が消滅するのは本当?
巷ではよく反物質たった1gで太陽系が消滅するなどと言われたりもしますがそれは本当でしょうか?
確かに対消滅はとてつもないエネルギーを放出することに間違いはありませんが、先述の通り1gの反物質でできることはニューヨークなどの大都市を壊滅させるくらいであり、これは真っ赤な嘘です。
太陽系どころか地球一つすらびくともしません。もちろん半端ない威力ですがね!!
1gでは威力が大きすぎて扱いにくそうなので、もう少し小さな規模で活用法を考えて見ましょう。
例えば反物質を用いた銃が考えられます。
この銃では通常の弾丸の先端に10億分の1gというごく微量の陽電子をくっつけて用います。
この弾丸が当たれば一発で家全体や戦車などの大きいサイズのものを完全に破壊できます。
なんとも恐ろしいですね。
しかし反物質の活用例は何も軍事目的だけにとどまりません。
反陽子はすでにいくつかの研究で、ある種のガンを治療する能力を持っていると示されています。
さらに反物質は星間飛行においても大活躍が期待されています。
反物質を燃料に用いたロケットは、なんと光速の50%もの速度で移動できるのだとか!
最も近い星までたった8年半、本人の体感では2年ちょっとで到達できてしまいます。
なぜ反物質を使いこなすのが難しいのか?
ここまで便利で革命的な反物質ですが、人類はまだまだ実用化できていません。
理由は3つ、反物質はとんでもなく希少で、さらに扱うのがとても難しく、そして恐ろしく高価だからです。
希少性
最近、宇宙全体のうちほとんど全てが通常の物質でできていることがわかりました。
確かに全体が反物質で構成されている銀河が存在する可能性は0ではありませんが、私たちは今のところまだ見つけられていません。
反物質は実は高エネルギーの宇宙線と地球の上層部の大気とぶつかることでも自然に生じています。
しかしそこから生じる反物質の量はごく微量で、さらに通常の物質と衝突する以前のごく短い期間で勝手に消滅してしまいます。
このように自然界には反物質はほとんど存在しないため、現在ある唯一の実用的な獲得手段は、人工的に作ってしまうことです。
しかしこの方法はとても難しく、お金も非常にかかります。
例えばスイスにある大型ハドロン衝突型加速器(LHC)はこれまで造られた中で最も高価で複雑な施設の一つですが、これは最大で毎秒1000万個もの反陽子を作り出すことができます。
この数字は一見たくさんあるように聞こえるかもしれませんが、実際は笑ってしまうほど少量です。
このスピードで1gの反物質を作ろうとすると、なんと1000億年もかかってしまうのです!
保存の難しさ
反物質の希少性がいかに難しい課題なのか理解していただけたかと思いますが、これは問題の一つでしかありません。
むしろおそらくさらにずっと大きな問題が残っています。
反物質は即座に通常の物質と対消滅を起こしてしまうので、通常の物質からなる保存容器で保存することができません。
対消滅を防ぐため、いかなる通常の物質とも触れないように反物質を固定しておく必要があります。
これまでの最長保持記録は先ほどのLHCも扱うCERN(欧州原子核研究機構)による「17分間」です。
先ほど述べたようにたった1gで都市全体を消滅させてしまうほど危険な反物質ですから、それを安全に保存することが最も優先的に考えられなければならない事項です。
どれだけ保存が難しかろうと、安全性を第一に考えなければならない点がまた反物質の極めて難しいところですね。
かさばる費用 反物質の価値はどれくらい?
では反物質を扱うために必要なコストは、いったいどれくらいになるのでしょうか?
NASAによると、1gあたり250億ドルとも62.5兆ドルとも言われています。
これは日本円にすると3兆〜7000兆円/gといったところでしょうか。
7000兆円というのは世界全体のGDPの83%にも及ぶ金額です。
たった1gで世界経済全体とほぼ同等の価値を持つ反物質、本当に恐ろしい子…
現在の技術では到底及ばないように思える反物質ですが、これまでの人類の成長を鑑みると、私たちがこの良い面と悪い面の両極端の面を併せ持つ反物質と共に生きる時代が近い将来訪れることは間違い無いでしょう!
ガン治療しても街消えたら治療した意味無くなっちまうw