「私たちは世界を冒険するには遅すぎ、宇宙を冒険するには早すぎる時代に生まれた。」という言葉があります。
確かに祖先たちは世界を冒険し新たなる大陸を発見したりしたし、子孫たちはきっと宇宙を自在に飛び回って新たな星を行き来しているでしょう。
でも本当に私たちの時代には新しい星へ行くことができないのでしょうか?
結論から言うと答えはNo、新たなる冒険への扉が今まさに開こうとしているのです。
別の恒星系への挑戦をイラスト付きで解説した動画を和訳しました!
Will Humanity Reach Another Star In Your Lifetime?
太陽以外の恒星に実際に行くとなると、やはりターゲットは最も近い「プロキシマ・ケンタウリ」です。
この星は地球から4.25光年も離れていますが、これはもはやあまりに絶望的な距離でもないようです。
では最新のテクノロジーを用いてどのようにこの星へ向かうのかを見てみましょう!
現在、地球から最も遠くにある人工物は「ボイジャー1号」です。
ボイジャー1号は地球から140天文単位離れた場所にあります。
1天文単位は地球と太陽の平均的距離(約1億5000万km)で、海王星までが約30天文単位ですから、ボイジャー1号は極めて遠くにあることがわかりますね。
ボイジャー1号は木星と土星の重力によるアシストを受け、17km/sもの速さで宇宙空間を進んでいます。
1秒で17kmも進むのですから、地球で考えるといかにとてつもない速度かが想像できます。
しかしこれほどの爆速でも、最も近いプロキシマケンタウリに行くには73000年もかかってしまうのです!
これではとても待っていられないですね…
しかしNASAは来年2018年に、パーカー・ソーラー・プローブと呼ばれる人類史上最速の人工物を打ち上げる計画を立てています。
これは太陽に接近し、外部コロナの謎を解き明かすための計画です。
パーカーソーラープローブは金星の重力アシストを何度も受け、太陽を楕円形で周回する軌道に乗る予定です。
太陽に最も近い場所でのスピードはなんと200km/s!
これはなんと地球をたった3分24秒で1周してしまうという凄まじいスピードです。
しかしこれほどのスピードでも、光速の0.07%でしかありません。
現にこのスピードを持ってしてもプロキシマケンタウリに行くのに7000年以上かかってしまいます。
これでも私たちは待つことができません…
それではどうすれば私たちが、少なくとも他の恒星系を間近で見るほどの歴史的な進歩を自分たちの目で目の当たりにすることができるのでしょうか?
人類の歴史を通してこれまで様々な画期的なアイデアが提案されてきましたが、おそらくその中でも最も素晴らしい計画の1つが、最新の構想である「ブレイクスルースターショット」でしょう。
もしこれが成功すれば、21世紀全体で最も重要な歴史的出来事となるはずです。
この計画ではわずか数cm規模の大きさで、重さも数グラムしかないごく小さい宇宙船に、縦横4mの大きさの帆を取り付けて用います。
そして計画を成功させるためにこのセットを1000個作ります。
そしてそれらはまず母船を打ち上げてから、そこから宇宙空間に放り出されます。
帆は地球上の船の帆と同じように働きます。
ただし動力源である風の代わりに1km四方の巨大な高出力レーザー軍団による加速を受けます。
このレーザーは帆の中心にある小さな宇宙船に、同時かつ集中的に浴びせられます。
そんなとんでもないエネルギーを受けた小さな宇宙船たちは、なんとたったの10分で光速の20%というとてつもない速さにまで加速するのです!
それらが軌道に乗ると、たったの20年以内にプロキシマケンタウリに到達することができるといいます。
計画開始が予定されているのは2036年で、そうなると2056年には初めて人工物が他の恒星系に到達できることになります。
まさに夢のような計画ですが、何も問題がないといえば嘘になります。
まずあまりに速いスピードで移動しているため、この宇宙船はごく小さな宇宙塵にぶつかっただけでも木っ端微塵になってしまいます。
そんなわけで1000個もの宇宙船と帆のセットが必要になるのです。
さらに宇宙船を加速させる1km四方のレーザー軍団は、宇宙船1機あたり100ギガワットものエネルギーを必要とします。
これはフランスにおける午後7:00の電気消費量全体に匹敵します。
一国のピークの時間帯に相当する電気量を確保するのは極めて困難ですが、不可能ではありません。
最後に、この計画全体でかかる費用は100億ドルにも及ぶと見積もられています。
これは現在の日本円で言えば1兆円以上に相当します。
この金額は一見あまりに高額に聞こえるかもしれませんが、NASAの2018年の予算が191億ドルだったり、国際宇宙ステーションにかかってきた費用が総額1500億ドルだったり、アメリカの2015年の軍事予算が5980億ドルだったり、アメリカの2018年の国家予算が4兆ドル以上だったりするのを考えると、10億ドルというのは決して無謀な金額ではないことがわかります。
プロキシマ・ケンタウリの恒星系には、「プロキシマ・ケンタウリb」という、ハビタブルゾーン内にある惑星が存在します。
打ち出された小さな宇宙船は、もしあるならばこの惑星の海や大陸などを撮影することができます。
この惑星はおそらく太陽系外惑星で初の人類の植民地になるでしょう。
そんな人類の未来に大きく貢献する偉大な計画のために、10億ドルを惜しむ必要はどこにもありません。
確かに私たちは世界を冒険することはできませんでしたが、運よく宇宙の冒険への大きな一歩を踏み出す時代に生まれました。
そんな時代に生まれたことを感謝し、人類の大きな飛躍の瞬間を楽しみにしましょう!