ブラックホールは、宇宙の中で最も恐ろしく奇妙な天体の一つです。
この極めて特異な天体に関する話題は決して尽きることがありません。
これまでも何度か取り上げてきましたが、今回もそんなブラックホールについて掘り下げた動画を和訳していきます。
大きいものから小さいものまで、ブラックホールの想像を絶するスケールをイラスト付きでお楽しみください!
The Unbelievable Scale of Black Holes Visualized
目次
質量を持つ全ての物質はブラックホールになれる
数学的には、質量のあるこの世のあらゆる物質はブラックホールにすることができます。
つまりあなたも、私も、あなたが見ている全てのものも、ある一定の半径(シュワルツシルト半径)以下にまで押し潰されればブラックホールになるのです。
徐々に密度が上がり重力が強くなることで、最終的にはそこから光すらも抜け出せなくなってしまうからです。
あなた自身がブラックホールになるには
もしあなた自身がブラックホールになりたい場合、砂粒1粒の10垓分の1の大きさにまで潰される必要があります。
想像もできないほど小さい空間ですね…
これだけでも十分にすごい話ですが、押しつぶす対象が大きければ大きいほど、より奇妙な現象が現れてきます。
ボーイング777をブラックホールにした時の恐るべき破壊力
例えば大型旅客機であるボーイング777をブラックホールにして見ましょう。
質量は約300トンと、先ほどの人間よりもかなり大きくなりました。
しかしこの旅客機をブラックホールにしようとすると、半径3.386×10^-22mの大きさにまで押しつぶす必要があります。
ちなみに水素原子の大きさが10^-11m程度です。
このブラックホールと水素原子の比は、「人間の赤血球」と「シチリア島(地中海最大の島)」の比と同程度なので、想像することすら困難なほど小さいのです。
そしてこの極小のブラックホールは「ホーキング放射」によって、1秒も経たないうちに完全に蒸発してしまいます。
蒸発したブラックホールはとてつもない量のエネルギーに変換され、500万メガトン規模の大爆発を起こします。
史上最大の人工核爆発であったツァーリ・ボンバですら57メガトンですから、なんとその87000倍もの威力です!
あれだけ小さなブラックホールですら、地球そのものを完全に破壊するのに十分な威力を持っているのですね。
エベレスト山をブラックホールにするには
仮にエベレストをブラックホールにするとしても、1nm(ナノメートル)以下の大きさになるまで押しつぶす必要があります。
1nmは1mの10億分の1の大きさで、ヘリウム原子を10個横に並べた長さと同程度です。
まだまだ想像もつかないほど小さな世界ですね。
地球をブラックホールにするには
ここまで出来上がったブラックホールの規模が小さすぎてイメージが湧きにくかったですが、地球大以上の物をブラックホールにすると途端にイメージがつきやすくなります。
この地球をブラックホールにするには…
なんとコイン1枚分の半径1cm以内までに押しつぶさなければなりません。
このたったのコイン1枚の小さな範囲に、私たち人類を含む全生命、そしてそれらの全歴史まで全てが詰まってしまうのですね。
こうなっては人類を含む全生命体にとっては大惨事に他なりませんが、太陽系にとっては何も影響がありません。
なぜならこのブラックホールは元地球なので地球と同じ質量を持っているため、これまで通り太陽を公転しますし、月もこのブラックホールを公転するからです。
太陽をブラックホールにするには
もしも太陽をブラックホールにするならば、半径3km以内の範囲に押しつぶさなければなりません。
これはセントラルパークの1.5倍の大きさで、この範囲に地球の33万倍もの質量が詰め込まれてしまうことになります。
この規模のブラックホールが一度形成されると、これまでのように穏やかには済まされません。
このブラックホールは周囲のガスや惑星、さらには他の恒星や他のブラックホールまでも吸収し、どんどん成長していくからです。
実在する主なブラックホールの特徴
ここからは実際に宇宙に存在するブラックホールの特徴を見て見ましょう。
実際に宇宙にあるのはこれまで取り上げてきたものよりはるかに大規模で、はるかに破壊的な恐るべき天体なのです。
最も小さなブラックホール「XTE J1650-500」
現在観測史上最小のブラックホールは、「XTE J1650-500」というブラックホールで、半径わずか12kmです。
小さな町程度の大きさですが、この中に太陽5〜10個分ものとてつもない質量を持っています。
当然、地球よりはるかに小さなこのブラックホールがあるだけで地球はいとも簡単に吸収されてしまうでしょう。
中間質量ブラックホール「GCIRS 13E」
次に「GCIRS 13E」という中間質量ブラックホールを見て見ましょう。
このブラックホールはそもそも存在自体が確定しておらず曖昧な部分も多いですが、以下は存在すると仮定した場合のスペックです。
このブラックホールの大きさはヨーロッパ大陸をすっぽり覆うほどの大きさです。
この中に太陽1300個分の質量を持っています!
すでにとてつもない規模のブラックホールですが、さらに巨大なブラックホールの前ではこれですらあまりに小さすぎるのです。
中間質量ブラックホール「HLX-1」
次は「HLX-1」というブラックホールを見て見ましょう。
このブラックホールは半径が29万5300kmもあり、木星4個を横に並べた長さと同じです。
そしてこのブラックホールには、太陽10万個分もの質量が含まれています。
これですらまだ「中間質量」ブラックホールなんです…
銀河系の中心にある「いて座A(Sagittarius A)」
次はいよいよ「いて座A」という超大質量ブラックホールを見て見ましょう。
このブラックホールは私たちの銀河系の中心にあるブラックホールで、半径はなんと1270万kmもあります。
これは地球から金星への距離の5%にあたります。
このブラックホールには太陽430万個分の質量が含まれており、まさしく銀河系を束ねるほどの恐ろしい規模です。
しかしこのブラックホールですら、赤子のように感じてしまうほど恐ろしいモンスターがこの宇宙には実在しているのです…
観測史上最大のブラックホール「S5 0014+81」
最後に取り上げるのはやはり宇宙最大のブラックホールです。
その名も「S5 0014+81」と、無機質な感じがなんとも不気味。
このブラックホールの半径はなんと2400億km!!
地球と太陽の距離の1600倍も大きく、太陽と海王星の距離よりも32倍大きい、太陽系をいとも簡単に丸呑みしてしまうまさにモンスターブラックホールなのです。
そして質量は太陽の400億倍!
感覚が鈍ってきていると思われる頃合いなので再確認しておきますが、太陽は地球の109倍大きく、33万倍重い大規模な天体です。
それではこのS5 0014+81は… 恐ろしいことこの上ないですね。
この重さをあえて「トヨタ車」で表すと、画像のような台数が必要になります。
もはや数えることすら億劫になるレベルの巨大な数です。
とりあえずここでは「とてもたくさん」と表現しておきましょうか。